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定年後 再雇用者の労働条件の設定について
みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。
新年度になりました。
コロナ禍からの脱出も叶わず、
東北地方を中心に地震も頻繁にあり
心穏やかに過ごすこともままならない状況ですが
お元気でお過ごしでしょうか。
さて、いわゆる「非正規労働者」とされる
雇用期間に定めのある契約社員、嘱託社員、
短時間労働者であるでパートタイマーと
正社員(雇用期間に定めのない労働者)との処遇格差の是正を
めざした、日本版「同一労働同一賃金」の規定が盛り込まれた
「パート・有期労働法」が4月1日より、中小企業にも適用になります。
正社員と契約社員等は役割・責任・配置転換の範囲等は異なることが大半かと
思います。「うちは同一労働ではないので関係ない」と言われる方が多いのですが
「同一」でない場合も、その職責等の違いに応じた処遇差となっているかどうかの
確認は必要ですし、契約社員やパートタイマー等から処遇差について説明を
求められたとき、会社は相談の窓口を決めて対応しなければなりません。
これらの規定は、定年後再雇用となった嘱託社員にも適用があります。
最近の裁判例では、地裁判決ですが、定年後再雇用となった自動車教習所の教官である
労働者が、定年前後で役割や仕事内容が変わらないのに処遇を大きく引き下げたのは違法である
と判断したものもあります。
(名古屋自動車学校事件:名古屋地判・令和2・10・28)
また、定年後の再雇用について、大幅な賃金の切り下げを提案した会社に対し
65歳までの雇用継続を求める高年齢者雇用安定法の立法趣旨に反するとして
会社に対し100万円の慰謝料の支払いを命じたものもあります。
(九州総菜事件:福岡高判・平成29・9・7)
裁判例は、それぞれの事案に応じた判断となりますので
すべての事例が当てはまるわけではありませんが
パート・有期労働法のが中小企業も含め全面適用となり
以前と異なり、60歳時点では年金の受給はできないため
(繰り上げ受給する場合を除く)
労働者の生活を考えると、定年になったからと言って
賃金を大きく引き下げるのは、労働者の生活を脅かすことにもつながりますので
処遇を慎重に考えるべきでしょう。
なお、参考として国家公務員(労基法等の適用はなし)については、現在は再雇用でおおよそ定年前の6割の
賃金が支払われており、今後定年延長となった場合は7割として運用が考えられているようです。
一概に「6割(もしくは7割)までなら下げられる」と理解するのではなく
引き下げ後の賃金額が担当業務や本人の能力に見合ったものであるのかどうかについても
検討する必要があると言えます。
定年後の労働条件については、定年前に当該労働者ともよく話し合いをし
納得をして働いてもらえることをめざすようにしてください。
4月給与の注意事項
1)健康保険料・介護保険料について3月分保険料(4月給与徴収分)より変更になっています。
参考)協会けんぽ 令和3年度 保険料額表
2)令和3年度 雇用保険料は前年と同率です。
参考)厚生労働省 令和3年度 雇用保険料率
3)日本版「同一労働同一賃金」を定めた「有期・パート労働法」の適用対象が
令和3年4月1日より中小企業にも拡大されます。
参考)厚生労働省「同一労働同一賃金」への対応に向けて
4)令和3年4月1日より高年齢雇用安定法が改正になり
70歳までの就業確保措置をとることが企業の努力義務とされます。
参考)厚生労働省 高年齢雇用安定法の改正について
今月の気づき
新年度になりました。コロナ禍になり2度目の桜の季節です。
ワクチン接種も始まり、昨年の今ごろ抱えていた大きな不安は
感じなくなりましたが(この状況に慣れすぎて?)
いつまでも0にはならない状況に、うんざりしてるというのが
正直な感想ですです。
大阪では感染者は増加傾向ですが、電車の中や町中の人が
明らかに増えています。
21時までとされている飲食店ですが、サラリーマンのグループが
遅くまでワイワイやっている姿もチラホラ見かけるようになりました。
まだまだ不特定多数の人が集まる場所は、安心できないため
自分なりに、警戒した上で行動範囲を決めたいと考えています。
会えないときだからこそ、人のご縁のありがたみをより感じるようになりました。
引き続き、今、できないことについてウジウジ思い悩むのではなく
できることに喜びを見出し、自分がやるべきことをしっかり果たしていきたいと思います。
仕事の進め方は、もっともっとお客様にとっても弊所にとっても
ストレスのないべん便利な方法があると考えていますので
改善に取り組みたいと思います。
(2021年04月発行)