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同一労働同一賃金の流れはいかに
みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。
7月に入りました。
関東地方では早くも梅雨明けとのこと。
水不足が懸念されますね。
さて、6月1日に、労働契約法20条をめぐる
2つの最高裁判決がありました。
労働契約法20条では、雇用期間の定めがあることにより
雇用期間の定めのない労働者と労働条件の相違がある場合
①労働者の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度
②当該職務の内容および配置の変更の範囲
③その他の事情
を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと
されています。
6月1日の最高裁判決では、本条の解釈をめぐって
いずれも運送会社の運転手において
【ハマキョウレックス事件】 契約社員と正社員の労働条件(毎月支給される手当)
【長澤運輸事件】定年後の嘱託契約社員と正社員の労働条件(賃金の内容)
の格差をめぐって判断が下されました。
いずれの事件においても、最高裁は労働契約法20条について
「有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があることを
前提に、職務の内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲その他の事情
(「以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理であると
認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに
応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される」としています。
すなわち
いわゆる契約社員(雇用期間に定めのある社員)と
正社員(雇用期間に定めのない社員)とで
労働条件の差異がある場合は,職務の内容,
その他の事情等を考慮した上で
①その差異は不合理であると解されるものであってならない
→ ◎「その差異は合理的なものではなければならない」ではない
②職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める
→ ◎「同一の処遇」ではなく「均衡のとれた処遇」である
「均衡のとれた処遇」であるか否かの判断にあたっては,
労使間の交渉や使用者の経営判断を尊重すべき面もある。
と判示しています。
さらに,同条に違反した場合の効果としては
→◎契約社員の労働条件が比較の対象となる
正社員と同様のものになるわけではない。
*契約社員は差額に対する損害賠償請求をすることができる。
長澤運輸事件の一審判決(東京地裁平成28年5月13日判決)では,
労働契約法20条違反の効果として,同社の正社員就業規則が原則として
全従業員に適用するとされていたこともあり,「定年後の嘱託社員の
労働条件のうち,無効となった賃金の定めに関する部分は,
正社員の就業規則が適用される」とされ騒然となりましたが,
最高裁判決により20条違反の場合の効果としては,損害賠償請求を行うことができる
(すなわち,違反=正社員と同様の労働条件になるのではない)ことが示されました。
さらに,長澤運輸事件では,高裁までは,賃金内容の個々の比較ではなく,
総額での均衡性の判断がなされていましたが
最高裁では,ハマキョウレックス事件やその他の20条違反をめぐる裁判と同様に,
手当ごとに判断をしていく手法がとられました。
さらに,定年後の嘱託契約社員については,「定年後の嘱託契約社員」であることは
「その他の事情」としての考慮要素となることも示されました。
***
これらの事件が最高裁まで争われたことは
いわゆる非正規労働者の処遇改善をめざす政府の意向があります。
消費喚起,さらに年金財政状況の改善をするためには
勤労者全体の所得の底上げが必要になります。
非正規労働者と,正社員との処遇格差につき
それが職務の内容等を考慮した上で
不均衡であるような場合においては
裁判例では,主に手当について
必要に応じて見直すことも視野に入れましょう。
ただ,企業は事業の運営をしていく中で
人件費の配分も考慮しているはずです。
従業員に対してどのような基準で手当を設定し
どう支払うのかは,本来は企業内で決定できるものであると
考えます。
「同一労働同一賃金」という言葉だけが先走りしているように
私は感じています。
処遇改善は,必ずしも非正規労働者だけではなく
労働契約法20条では保護の対象とはならない
期間の定めのない労働者に対しても求められることだと思います。
会社として最低限やっておくこととしては
給料の内訳となる基本給や手当の支給基準について
ある程度明確にしておくことだと考えています。
働き方改革を推進するために今国会に提出された法律案の概要として
コチラをご参照ください。
7月給与の注意事項
1)賞与の支給後は賞与支払い届と源泉所得税の納付をお忘れなく
2)7月10日は,労働保険料の申告および納付,算定基礎届の提出期限です。
3)4月昇給者,異動による手当の変更者について,社会保険料の随時改定に該当しないかどうかの確認をしてください。
今月の気づき
2018年も6ヶ月が経過しました。
今年は息子の大学受験に始まり
6ヶ月間,公私ともにバタバタでした。
仕事もおかげさまで順調なのですが
昨年からずっと2人枠のスタッフのうち
1名が入れ替わりが続いています。
3年目に入るスタッフさんのがんばりで
これまで手続業務の電子化をはじめ
省力化に努めてきたので,なんとか
回っておりますが,ギリギリでやるのは
不安が大きいため,なんとか彼女に
楽をしてもらう方法を考えております。
私自身は,加齢に伴う体力の低下や
視力の衰えを踏まえた上で
どう業務をこなしていくかが課題です。
仕事があることは本当にありがたいです。
社会に役立つ自分でありたいので。
お客様に安心していただくために
スタッフには負担がかかりすぎないよう
環境を整えるのも経営者である私の責任だと思っています。
2018年下半期は,安心して仕事ができる環境つくりに
取り組んでいきたいと思います。
◎つきましては新規スタッフを募集しております。
詳細はこちら。
(2018年07月発行)