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いより通信 vol.103 (2013年09月号)

「ブラック企業」って何やねん

9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続きます。
8月は事務所にいることが多かったので、
ほとんどTシャツで仕事をしていました。
夏はTシャツが一番気持ちいいですね。

さて、8月29日に、大阪労働労働局が9月に
「若者の使い捨て」が疑われる企業に対して
監督指導を行う旨の発表がありました。

ちなみに朝日新聞には「ブラック企業400社立ち入り」の表記がありましたが、
大阪労働局の報道発表をみた限りは「ブラック企業」の表記は
見あたらないですね。

そもそも「ブラック企業」ってどんな会社を指すのでしょうか。
若者の使い捨てもそのひとつだと思いますが
それだけではないと思うのです。

私が考える「ブラック企業」とはこんな感じの会社です。

・事業そのものが社会的に見て問題あり
・パワハラ・セクハラが横行している
・長時間労働・連続出勤の放置
・最低賃金以下の賃金
・働きに応じた賃金の支払いなし
・そもそもの労働契約があいまい
・給料を突然引き下げる
・解雇者続出
・健康診断の実施なし
・ノルマは与えるが教育訓練など会社がやるべきバックアップなし
・経営者の会社の私物化

しかし、会社は慈善事業をやっているわけではないので
経営難になってしまったときに、給料を引き下げたり、社員を解雇したりせざるを
えない場面もあります。
逆に急に受注が増え、連続で残業をさせたり休日も出勤してもらうこともあるでしょう。
給料の引き下げや解雇、長時間労働自体がブラックだと言っているのではなく
問題はそのやり方、と平常時の労務管理だと考えられます。

会社が利益が上がっているときは、「社用車」という名目の社長の車がどんどん立派になり
「役員社宅」という名目の社長の息子の家が立派になっていく。
たまに会社に顔を出す社長の娘や嫁は新品のブランドモノのバッグを持ってくる。
しかし従業員にはわずかな賞与還元だけである。

ところが、いざ業績が悪くなると、豪華な社用車を売る前に
社員の給料を下げたり、人員削減にまっ先に手をつけるとなると、
社員の感情として「この会社はどうなっているんだ」
と思わざるを得ないでしょう。

私のお客様でもリーマンショックの後に受注が急減した会社があります。
会社(工場)に伺ったとところ、所狭しと置かれていた仕掛品が全くなくなっていて
社員は仕事がないので、徹底的に工場の整理整頓をしており、
「こんなに綺麗な工場だったんだ」と思った記憶があります。

その会社の社長は、給料を下げて雇用を守るという選択をされ
社員に頭を下げました。利益が出ているときには、決算賞与という形で
十分社員にも還元をしていましたし、社長の雇用を守って今の危機を乗り切るという
気持ちが通じ、1年以上カットされた給料のまま社員が我慢をしてくれました。

その後、受注が戻ったときに、業務に精通している社員達が残業を重ねても
どんどん対応してくれたので
社員を減らした会社よりも一歩先に立ち上がることができたそうです。

この会社の社員は、決して自社をブラック企業だとは考えていないと思います。
「賃金カット」「長時間労働」「解雇・退職勧奨」「パワハラ・セクハラ」など
ひとつひとつの事象があることが「ブラック」ではなく、
意味なく「賃金カット」や「解雇」を行う、「長時間労働」「パワハラ」の対する
対策もせずに放置する会社が「ブラック」だと言われるのだと考えます。

その会社が「ブラック」かどうかを決めているのは、実は働いている人の感情なのです。
もちろん過酷な労働条件もありますが、その先に未来があれば進んで受け入れ乗り越えて
次のステップを目指す前向きな気持ちになるのではないでしょうか。

「うちの会社なんて小さい会社やし、大企業みたいに世間に叩かれることはないから
まぁそこそこやっとけばいいねん」とおっしゃる中小企業の経営者もいますが
経営者たるもの、従業員に正面から向き合えるよう、やるべきことはやる、
今できていないことは、いずれやることを宣言し、自社の社員に不信感を抱かせないようにしましょう。

ここでいうやるべきこと、は、大阪労働局の報道発表資料にもあるように
「長時間労働対策」と「パワハラ・セクハラ対策」です。
社員の離職率は、自社の労働環境がおかしいのではないか、とチェックするひとつの基準となります。
今回、ハローワークの窓口から監督署への情報提供というのもその一環ではないでしょうか。

経営者たるもの、陽の当たる道を堂々と歩いていただきたいです。
「ブラック」だと揶揄されることのないよう、ぜひ自社の労働環境の見直しをしてみてください

9月給与の注意事項

1.今月から厚生年金保険料の料率が変更になります。
(翌月給与で社会保険料を引いている場合は10月支給給与からの変更です)

■新保険料率表はコチラ
 

2.今月から算定基礎届で決定された新標準報酬月額が適用になります。
(翌月給与で社会保険料を引いている場合は10月支給給与からの変更です)
 

3.最低賃金の改定の時期です。
大阪は、800円から819円に、東京は850円から869円に引き上げられる予定です。(8月31日現在答申中)
改定後は、最低賃金以上の賃金の支払いが必要になります。
事業所がある都道府県労働局の報道発表にご注意ください。
 


 

今月の気づき

ブラック企業=長時間労働 と言われますが、8月はめっちゃ働きました。
オフィシャルで「お盆休み」にしていた週もフル稼働です。
職員さんが退職をしてしまったから、というのが大きな理由ですが
退職がなくても、原稿執筆があったので休めない状況でした。
 

ここ数年、週末に出勤しない日は数えるほどしかありません。
家族もいるので日曜日は休む、と自分ルールを決めていましたが
4月に大学院に行き始めてから日曜日も休めなくなり
単行本の執筆も始まりで、時間はあってもあっても足りない状況です。


うちもブラック企業ではないか、と思われると困るので、ハッキリ書いておくと、
職員さんには残業・休日出勤は一切禁止にしているので、
従業員の長時間労働問題は完全クリアでホワイトです。


それでも職員さんが退職をしていくのは、人はそれぞれ自分がめざすことがあって
うちの事務所でそれができるかできないか、なのかな?と思います。
採用の時点では、こちらが選ぶ立場ですが、入社してからは、続けるかどうか
どこまで本気で仕事をやるのかは、働く人が決めることなのだなと思います。


こちらができることは、職員の力をうちでフルに発揮してもらうための
土台を提供することと、チャンスを与えること。
さらに、外ばかりを向くのではなく、職員としっかりコミュニケーションを取ることだと
思いました。


社労士事務所なので労働条件はこれでもか、というくらいにホワイトですが
従業員はそれだけでは続かないといういい事例ですね。


9月から新しい職員が入ってきます。日々前進。
今回得た教訓で3年後、5年後、10年後によりよい事務所になっているよう
がんばろうと思います。
過去は変えられないですが、未来は心掛けで作り出すことができますからね。

(2013年09月発行)

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