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いより通信 vol.77 (2011年07月号)

「マナー」に気遣う社員を育てる

写真その1みなさん、こんにちは。社労士の井寄です。7月に入り、一気に気温があがってきました。震災の影響で節電が叫ばれていますが、これだけ気温が上がってくると体力の消耗との勝負になってきますね。
倉庫で作業されている社員さんが熱中症で倒れたというご報告も既に受けています。節電もやらねばならぬことですが、まずは社員が安全に仕事をすることができる環境つくりに気遣いたいですね。

さて、みなさんの会社にも就業規則があるかと思います。職場のルールをまとめたものが就業規則です。人が集まって何かをする場合、スポーツも同じですが、ルールが必要になります。
しかし、ルールだけでは、実はうまく組織を動かすことはできません。どんな仕事であれ、他人との関わりなしで進めることはできません。そんなときに、ひとりひとりが気にしなければいけないのは、他人を気遣う気持ち、すなわち「マナー」を守るということです。

何が常識で、何が非常識なのかは人によって判断基準が異なります。また職場によっても異なるでしょう。例えば、私が20年前に新卒で入社した会社には、女性のみ「お茶当番」というものがありました。お茶当番に当たった日はいつもより1時間早く出勤し、机の拭き掃除をし、机の上に置かれていた灰皿を片付け、お茶の準備をする、というものでした。私が入社する前は、フロアに50名ほどいる社員ひとりひとりにお茶を入れて配っていたそうです。

こんな話は、かなり時代遅れで、労働基準法にあてはめると1時間の早出が強制であれば、残業手当の対象になるのでは。。ということにもなるでしょうが、当時は職場の慣習として続けられていたものでしたので、みんな文句を言いながらもやっていました。
その代わりかどうかわかりませんが、出張に行った男性社員が女性社員に対してだけお土産を買ってきてくれたり、会社の帰りに居酒屋に行ったときにも女性は負担金なしという「持ちつ持たれつ」のような空気があったように思います。

世は変わり、今は権利主張はしっかりするけれども、そもそも会社で仕事をするということはどういうことなのかわかっていない社員が増えているように感じます。例えば、朝の始業時間や、昼休みが明けて午後の始業時間は勤務を開始する時間であるという認識がないなどです。

朝の始業時間から仕事をしようと思えば、少なくとも10分前には職場に到着し、仕事に取り掛かる準備を整えるべきですし、職場によっては、掃除をして身の回りを片付けてから仕事に取り掛かるところもあるでしょう。始業時間は会社に到着する時刻ではないことを知らない人がいるのです。

また年次有給休暇についても、取得は社員の権利ですが、人数が少なかったり、チームで仕事をするような職場であれば、事前に周りの人に確認をしたり、「根回し」をすることが必要になるでしょう。
また退職前にまとめて有給休暇を取得する場合も、当然引継ぎは完了してから行うべきものであるでしょう。

会社でスムーズに仕事をすすめるためには、周りの人に気遣い、チームとしての力を有効に発揮すべく知恵を絞るべきなのです。それがマナーを知るということです。

一昔前であれば、こういった「常識」や「マナー」は家庭や地域社会、学校で身につけてから社会人になったものでしたが、残念ながら現在は少し様相が変わっているようです。「マナー」を社員に身につけさせるのも経営者の役割のひとつとなっています。朝礼等を利用して、自社の社員のあるべき姿を経営者自らが説く必要があります。

企業風土は社員ひとりひとりが作り上げるものです。例えば、先輩社員が皆早めに出勤して掃除をしているのに、始業時間ギリギリにしか出てこないような新入社員はいないでしょう。社員が共有する「当たり前」のレベルをどのようにあげていくかが大切です。できていないことを指摘し叱責するだけではなく、できる仕組みを考え、経営者自らが行動しあるべき姿を示していきましょう。

7月給与の注意事項

  1. 賞与の支払いがある会社は賞与支払い届の提出。および源泉所得税の納付をお忘れなく
  2. 7月11日は労働保険年度更新・労働保険料納付・算定基礎届提出・特例の場合の源泉所得税の納付期限です。

今月の気づき

6月の終わりに滋賀県の長浜で講演をさせていただく機会がありました。湖北地区雇用対策協議会が主催で、テーマは『不況時における労務管理のポイント』でした。
不況時の労務管理といえば、人員削減や賃金カットなど、社員にとってはマイナスの経営判断をせざるを得ないケースも多いのですが、社員を辞めさせずに不況を乗り切った会社の実例をご紹介させていただきました。

それらの会社は人員削減はしていないけれども、例えば退職者が出たときに補充をしないことで自然減を図ったり、また中小企業雇用安定助成金の活用で、順番に休業をしながらワークシェアリングを行って社員の雇用の維持をしていました
仕事が減って空いた時間を社員教育に使い、ジョブローテーションを行うことで、社員が隣接業務も行うことができるように仕組みを整えていったのです。

その結果、社員を減らさなかった会社は、受注増になったときにすぐに対応ができたようです。受注減で休業の助成金申請をするご相談をいただいていた経営者の方から、今年は黒字決算をすることができました!と嬉しいご報告もいただいています。

景気がよいときも悪いときも、常に自社の仕組みの見直しは必要だと考えます。あるべき姿に向かってメンテナンスを続けることで強い土台を作ることができます。悪いときでも前を向いて、足元のできることからやっていくこと、経営者であれば常に次の手を考えて動き続けることが大事だと、V字回復を成し遂げた経営者の誇らしげな顔を見て改めて感じました。

(2011年07月発行)

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